この乗り物にローカル線の未来が託された! DMV乗車体験記
さて、8月5日の夜に札幌大通のバスターミナルから夜行バスに乗車して網走にやってきました。網走には朝の6時に到着したのち駅の待合室で過ごし、8時前に駅前のバス乗り場に向かいました。そして、時間になると駅前の通りから、今回の旅最大の目玉といえる乗り物が到着しました。
駅前で信号待ちをするDMV 2007年8月6日 網走駅前で筆者撮影
今回の旅は北海道を廻るものでしたが、最終日には今まさに話題沸騰のこの乗り物に乗車体験となりました。JR北海道がローカル線の未来に向けて開発した、線路も道路も走ることのできる乗り物「デュアル・モード・ビークル(DMV)」に乗車しました。
JR北海道では利用需要の少ない路線が多く、これら路線の活用にむけて開発が進められたDMV、各種テストが実施されたのち今年の春から釧網本線の浜小清水~藻琴で試験営業が始まりました。
試験営業ということで、運行ルートは浜小清水駅から藻琴駅までは釧網本線の線路を走行し、藻琴駅からは道路を走行して浜小清水駅に戻ってくるというルートで途中で下車することはできません。3便設定され、乗車する際にはJR北海道のHP等で予約を行い、事前にクーポン券を用意してから当日乗車する方式になりますが、すでに9月までの運行はすべて満席の状況になっており、なかなかの人気になっています。
さて、私はDMV1号に乗車するのですが、1号便では浜小清水駅の他網走駅前からも乗車が可能でしたので、ここから乗車しました。なお、網走駅から浜小清水駅までは道路を走行します。
2007年8月6日 網走駅前で筆者撮影
いよいよ乗り込む 2007年8月6日 網走駅前で筆者撮影
DMVは、マイクロバスを改造した乗り物で、定員は12名と少なくなっています。これはマイクロバスに鉄道線路を走行するための各種装備がなされているためで、その分乗車できる人数が減ってしまっています。
まずは網走駅から浜小清水駅まで進みます。
車内ですが、マイクロバスの車体だけに、また自由席であったのですが、自分が座った場所がタイヤの上でしたので、なおさらですが窮屈に感じました。今後の課題といえるのではないかと思いました。
こうして、DMVは浜小清水駅に着きました。
浜小清水駅に到着したDMV 2007年8月6日 筆者撮影
浜小清水駅駅舎 2007年8月6日 筆者撮影
ホーム上の駅名標 2007年8月6日 筆者撮影
浜小清水駅は、オホーツク沿岸の列車の行き違いができる無人駅ですが、駅自体は並行して走る国道の「道の駅」に併設されています。この売店でDMV関連のオレンジカードが2種類販売されていました。うち1種類はJR駅ではすでに完売になっていたものでしたので、貴重なものを入手することができました。また、DMVのチョロQもここでは販売しているのですが、これは大変な人気ですでに完売状態で、インターネットのオークションでは高値で取引されているとのことです。
さて、浜小清水では出発まで時間がありましたので、DMVを撮影してみました。
2007年8月6日 浜小清水で筆者撮影
リアの様子 2007年8月6日 浜小清水で筆者撮影
さて、出発時刻が近づいてきますと、この場所で線路走行を行なうためのテストが行なわれました。
線路走行にむけて車輪を出した様子 2007年8月6日 浜小清水で筆者撮影
車輪のアップ
DMVは線路走行時には、このように車輪が出てフロント部分が前に持ち上がるような格好になります。また車輪自体はあくまでも線路を走行するためだけのもので、駆動自体は後輪のタイヤで行ないます。よってレールの上では車輪と後輪タイヤで走行する格好になります。これがJR北海道が開発したDMVの構造上の特徴であり、線路も道路も走行できる仕組みの根幹となります。
こうして、再びDMVに乗り込みます。DMVは線路上はJR北海道の運転士さん、道路上は地元のバス会社網走バスの運転士さんが運転し、全行程でJR北海道のガイドさんが同行しました。
浜小清水駅構内には、道路から線路に入るためのモードチェンジがあります。
浜小清水駅構内の「モードチェンジ」 DMVはここから線路に入る 2007年8月6日 筆者撮影
浜小清水のモードチェンジでは、ガイドウェイを利用してレールと車輪の位置を合わせます。この切り替えに要する時間はほんの10~15秒のわずかな時間で行なうことができます。ただ、その後DMVを線路に入れるための安全上の手続きで時間を数分要している状況でした。こうして、DMVはさっきまで道路を走っていたはずなのに、線路上を走行するようになります。
車内では、DMVについてや釧網本線沿線についてのガイドさんからの説明がありました。線路走行時では進行方向右側はオホーツク海の海岸を見渡せます。まずは線路走行時のDMVからの車窓を撮影してみました。
DMV 釧網本線走行時の車窓 いずれも2007年8月6日 筆者撮影
さて、DMVは藻琴駅に着きました。ここで線路から道路へのモードチェンジとなりますが、ここでは踏切状の箇所で切り替えがあっと言う間に行なわれました。ここからは道路上を走行することになります。道路上は、釧網本線からは離れて藻琴湖・濤沸湖を周遊するルートを走行します。湖は撮影できませんでしたが、この付近の田園風景を撮影してみました。
DMV 道路走行時の車窓 いずれも2007年8月6日 筆者撮影
さっきまで線路を走行していたはずがそのまま道路を走行している、なんとも不思議な光景ですが、これもDMVならではといえるでしょう。
DMVに乗車して、車内で乗車記念品として乗車証明書とDMVのパンフレットさらにはオリジナルのボールペンを頂きました。いずれもDMVに乗車しないともらえないものでしたので、これは貴重なものになりました。また満員の乗客でしたが、乗車していた方は結構関東地方から来た人も多く、またこのDMVを視察にとある地方の議員さんのグループも乗車していたのが印象的でした。やはりローカル線の維持にはどこの地方でも苦慮している状況で、このDMVに期待している面も多々あるのではないかと感じました。また、今後の開発にむけてのアンケートもついていました。
そうこうしているうちに、DMVは浜小清水駅に戻ってきました。
浜小清水駅に戻ってきたDMV 2007年8月6日 筆者撮影
再び撮影してみました。
2007年8月6日 浜小清水駅で筆者撮影
釧網本線のキハ40と 2007年8月6日 浜小清水駅で筆者撮影
乗車する列車まで時間があったのですが、このDMVかなり人気のようで、待っている間に多くの人が訪れ写真を撮っていました。この日は平日でしたがこれが休日ともなりますと多くの人が浜小清水を訪れ、この駅構内のモードチェンジ付近にはさらに多くの人が訪れるといった、道の駅「葉菜野花小清水」の名物となったようです。また沿線にもクルマで並走される方がいらっしゃるとのことです。
さて、乗車したDMVでしたが線路走行の姿も撮影したいと思い、次の便を撮影するため、浜小清水から網走行きに列車に乗り一つ目の原生花園駅で下車、ここで撮影することとしました。
原生花園駅 2007年8月6日 筆者撮影
原生花園駅は、毎年5月から10月までの間開設される臨時駅で、この駅周辺は網走国定公園の小清水原生花園になっていて、オホーツク海沿いにハマナスなどの花が咲き誇る景勝地であり多くの観光客が訪れるところです。また、この駅にも駅員さんがおり主に記念のオレンジカードや記念入場券を発売しています。原生花園駅が開設されて今年で20周年とのことで、現在来駅記念のオレンジカードが発売されているのですが、その図柄が原生花園駅とDMVになっています。この駅前の踏切でDMVが通過するのを待ちます。そして、DMVはやってきました。
原生花園を通過するDMV 2007年8月6日 筆者撮影
線路を走るマイクロバス、なんともユーモラスなスタイルですが、これもDMVならではのものです。観光客が訪れるところだけあって、この場所でも多くの人がこのDMV通過のシーンを撮影していました。
こうして、JR北海道がローカル線の未来をかけて開発したDMVに乗車してきました。このように道路も線路も走行できるという夢の乗り物がついに実現しました。実際に走行できるところまでこぎつけましたが、まだまだ課題があるようで、今後は駅などの施設面の整備や、今では窮屈であまり多くの人が乗車できないだけに路線バスクラスの車体でDMVは作れないのか、さらには連結運転は実施できるのか?(試験運転では連結運転は行なわれたとのことです)超えなければいけないハードルがありそうです。
しかし、線路も道路も走行できる乗り物は実現しました。これから、この乗り物が大きく発展しローカル線の未来が明るいものであることをぜひ祈りたいと思います。
この記事をご覧になりました皆様、ぜひ線路も道路も走行できる乗り物「DMV」に乗車体験されることをお勧めいたします。そして、この乗り物が今後更なる発展と普及していくことに期待してみようではないでしょうか。
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