松本電鉄の保存車両 ハニフ1
さて、今回松本電鉄を訪れた理由は、現在新村車両所に保管されている国鉄初の電車とされるハニフ1が公開されているということで、行ってきました。
松本電鉄で保管されていた国鉄初の電車とされるハニフ1 2007年3月10日 筆者撮影
ハニフ1が保管されているところは、松本電鉄上高地線の車庫のある新村駅構内に、専用の倉がありここで保管されています。倉から引き出せる分の線路上に保存されています。今回の公開は、長きに渡り保管されてきたハニフ1のさよならイベント前の一般公開となっています。
さて、その保管場所である新村駅は開業当初からの駅舎が残っています。
松本電鉄上高地線新村駅駅舎 2007年3月10日 筆者撮影
この駅舎の脇に、こんな建て看板がありました。
ハニフ1が保管されていることを示す看板
普段はみることはできないハニフ1ですが、この地域の史跡ということでこのような看板がありました。
さて、ハニフ1は車両基地の中にある専用の倉から出された状態で展示されています。その場所へ向かう途中で、こんな車両を見ることができました。
1986年から2000年まで松本電鉄上高地線で活躍していた5000形 元・東急先代の5000系の譲受車 2007年3月10日 筆者撮影
現在では京王井の頭線3000系の譲受車が活躍している松本電鉄上高地線で、かつての主力車両であった5000形が1編成残されていました。元は「青ガエル」というニックネームで親しまれた、東急先代の5000系の譲受車です。保存が考えられているのかどうかはわかりませんが、状態はかなり悪くこのままどうなるのか気になります。
5000形の廃車体の脇を過ぎて、検修庫の裏に回りますとハニフ1が保管され展示されている場所になります。展示されていたハニフ1を撮影してみました。
ハニフ1 新島々方(客室側)
ハニフ1 側面
ハニフ1は3等客室と手荷物室からなる車両です。
ハニフ1 松本方(荷物室側)
ハニフ1 台車
ハニフ1 車号表記
ハニフ1 車内の様子(荷物室から撮影)
ハニフ1ですが、製造されてから103年も経過した木造の車体であることから、床などの劣化が著しく車内の公開はしていませんでした。この画像は、外から戸が開いていた荷物室から撮影したものです。
倉の中には、ハニフ1についての経歴の展示がありました。
倉の中にあった ハニフ1の経歴
松本電鉄で今日まで保管されてきたハニフ1についての経歴は、明治37年(1904年)に現在の中央線を開業させた甲武鉄道の飯田町工場でハ9号電車として製造され、同年8月より飯田町~中野でそれまでの蒸気機関車から電車での運転を開始しました。なおここの記しました飯田町駅とは、現在の飯田橋駅東京方にあるJR貨物の本社ビルがある付近にあった駅で、当時はここが中央線の始発駅でした。その後、1906年に甲武鉄道は国有化されこの電車が国鉄初の電車となりました。
その後大正4年(1915年)にこの車両は、現在の大糸線の一部になっている信濃鉄道に払い下げられ、同線では電装品は取り外して客車として蒸気機関車に牽引されて使用されていました。その後、大正11年(1922年)に開業間もない現在の松本電鉄上高地線である筑摩鉄道に払い下げれ、このとき車内の一部を荷物室にする改造が行われてハニフ1となり電車に付随運転して昭和23年(1948年)使用され、休車となった後昭和30年(1955年)で廃車となりました。その後半世紀以上にわたり保管されてきました。
地方私鉄で、これだけ歴史的価値のある車両を保管してきたことは賞賛に値することであり、よくぞ今日まで保管してきたと感じました。
さて、半世紀以上にわたり松本電鉄で保管されてきたハニフ1ですが、3月21日までの土・日曜日の昼間に公開されています。そして3月21日には「おわかれイベント」が実施されます。
「おわかれイベント」後のハニフ1ですが、国鉄初の電車の車体ということで、今年10月にさいたま・大宮に開設される「鉄道博物館」に収蔵されることになりました。3月21日にはお別れイベントの中で、トラックに積み込み同日の夜に大宮に向けて出発すると、展示場所にいた松本電鉄の方がおっしゃっていました。大宮へ搬送後は展示に向けて車体の修復などが行われ、10月のオープンの際には、その時代を伝える展示物としてその姿を見せることと思われます。
今から100年以上前、甲武鉄道が現在の中央線で走らせた電車、のちに国鉄初の電車となったハ9号が流れ着いた松本の地で、これだけ長きに渡り保管されてきたハニフ1、まずは大宮までの道中の無事を祈るとともに、10月にオープンする鉄道博物館の展示が楽しみになってきました。
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