最後の「青ガエル」 熊本に健在!
今回の旅行記では、まず熊本空港を降りてバスで交通センターで下車した後、ここから程近いところにある辛島町電停から市電に乗り、上熊本にやってきました。ここから、熊本電鉄に乗車します。熊本電鉄は運転系統上から市内の藤崎宮前から御代志と、その途中の北熊本から上熊本までの分岐線を折り返す路線に分かれています。まずは、上熊本から北熊本まで乗車してみました。
熊本電鉄上熊本~北熊本を折り返す電車 車両は元東急電鉄先代の5000系「青ガエル」 2007年1月6日 上熊本で筆者撮影
さて、熊本電鉄の上熊本から北熊本を折り返す区間で運転されている車両は、元東急電鉄先代の5000系の譲受車です。東急先代の5000系は1954年にデビューし、張殻構造を採用した軽量車体とこの当時の最先端の技術であったカルダンドライブ・電気ブレーキを搭載した高性能車でした。外装は緑色でデビューし、その風貌から「青ガエル」というニックネームで親しまれた名車でした。
デビュー当初は東横線の急行として文字通りの主役として活躍しましたが、やがてステンレスカー導入により大井町線や目蒲線に転じて、その後東急線からは姿を消しました。しかし、当時最先端の高性能車であったことから多数の車両が各地の地方私鉄に渡り、それらの土地でもその風貌で親しまれてきましたが、寄る年波には勝てず相次いで引退し現在運行できる状態で残っているのは、この熊本電鉄に渡った車両のみになります。
熊本電鉄でも、同線オリジナルの塗装になっていましたが、近年塗装が再び緑一色になり往年の東急時代を彷彿とさせる文字通り「青ガエル」の仕様で運転されています。
出発を待つ5102A 2007年1月6日 上熊本で筆者撮影
反対側は切妻の貫通先頭 2007年1月6日 上熊本で筆者撮影
上熊本~北熊本を折り返す電車は単行運転です。このため今回乗車した5102Aでは、上熊本方が切妻の運転台となります。
上熊本~北熊本は30分間隔で1編成の列車が往復しています。上熊本から北熊本まで約10分の所要時間になります。では、今も残る「青ガエル」で北熊本に向かいます。
上熊本を出発しますと、すぐ幹線道路を横切る踏切を越えて、やがて坂を上りトンネルに入ります。代官山あるいはかつての反町のトンネルを思い起こす風景です。トンネルを抜けると坂を下ってこの間にある各駅に停車してから、終点の北熊本に着きます。
北熊本に到着した5102A 車庫には5101Aが留置中 2007年1月6日 筆者撮影
北熊本には車庫があります。ここで、上熊本~北熊本を折り返すもう1両の5101Aが留置されていました。
車庫に留置中の5101A 2007年1月6日 北熊本で筆者撮影
車庫に留まっていた5101Aは、上熊本方がオリジナルの前面になります。東急線で一世を風靡しその後は各地方に渡り大活躍した東急先代の5000系も、稼動できるのは今となってはこの2両のみになってしまいました。
さて、北熊本から先も熊本電鉄に乗車してきましたが、その帰りも北熊本から上熊本へ「青ガエル」に乗車してみました。
帰りも北熊本から乗車した 2007年1月6日 筆者撮影
往きと同じ線路を走って終点の上熊本に着きました。上熊本で折り返して出発した5102Aを撮影しました。
上熊本を出発した5102A 2007年1月6日 筆者撮影
こうして、熊本に今も残る元東急先代の5000系「青ガエル」に乗車してきました。今となっては、稼動しているのはこの熊本の2両だけとなった貴重な車両です。熊本電鉄ではまだこの区間では「青ガエル」を使い続けるようで、この車内にそのような掲示がありましたが、その内容は「冷房付きの車両として適当な車両が調達できない」という点と「5000系に冷房装置を搭載することは車体構造上困難」という、むしろ冷房車が導入できないことに対するお詫び的な文面になっていました。いずれにしましても当分の間この車両は活躍し続けるということになります。
一世を風靡した東急先代の5000系、「青ガエル」というニックネームで親しまれた名車は今も熊本の地で活躍しています。渋谷駅ハチ公前広場にカットされた「青ガエル」の車体が置かれて新たな待ち合わせ場所のモニュメントとなってしまったものまで出現してしまったこの一族で、いまだ現役で活躍しているのは特筆すべきことです。
この記事をご覧になりまして、時代を切り開き今でも語り継がれている名車、東急先代の5000系「青ガエル」に会いに、熊本に行ってみてはいかがでしょうか?
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栃木路快速 Tochigiji Rapid Serviceさん
海外鉄道旅行愛好者さん(こちらのブログでは、この「青ガエル」の動画を公開しています)
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コメント
こんばんは。熊電のカエルは健在なんですね。私も6年前の秋に熊電に乗りに行きましたが、このときはまだオリジナル塗装だったときでした。しかし「東横百貨店」と書かれた吊革があったりして、東急時代を髣髴とさせるものもありました。
当時は三田線から来た6000系も入ったばかりでしたが、都営時代の広告シールがそのまま自動ドアに貼られているのを見たときは思わずにやりとしてしまいました(^^)。こうしたところを見つけてみるのも、地方私鉄では楽しみの一つですね。
投稿: mattoh | 2007.01.09 22:41
TBありがとうございます。私も、正月の旅行で熊電を訪れてはいるのですが(爆)、諸事情により記事のアップが遅れております・・・。
>熊本電鉄ではまだこの区間では「青ガエル」を使い続けるようで、この車内にそのような掲示がありました
実は私、全くこの掲示に気付きませんでした。さすがですね・・・。
藤崎宮前-御代志で活躍している6000系に「東京都交通局」の銘版が残っているなど、訪問して感じたのは、かなり個性的な鉄道会社であるということでした。乗り合わせた乗務員の方も大変親切で、よかったです(^^)。
投稿: 栃木路快速 | 2007.01.09 22:57
コメントいただきまして、ありがとうございます。
mattohさん>
熊本電鉄の「青ガエル」はいまだ健在です。外装も東急時代を思わす緑色になり文字通り「青ガエル」そのものといった感じです。車内には東急百貨店の文字も健在でした。
すでに50年なろうとしている車両で、老朽化も進んでいます。しばらくは使い続けるようですが、今後どうなるかはわからず、1日でも長い間活躍してほしいと思います。
栃木路快速さん>
貴ブログの記事で先を越されてしまいましたが、私も熊本を訪れ「青ガエル」に乗車してきました。
確かに経営は楽ではないと思いますが、それだけにワンマン運転の乗務員さんの仕事振りは、この鉄道が何より親しまれていることの現れなのではないかと思います。今となってはここにしか動ける車両が残っていない「青ガエル」1日でも長く活躍してもらいたいものです。
投稿: Kaz-T | 2007.01.10 00:03
電鉄では電車・バス共に各地の中古車両が揃い、大都市圏から来た人間を楽しませてくれますが、この青ガエルに乗車したときは夏の暑い盛りでしたので、幾ら短距離でカルダン車とはいえ、そろそろ何らかの施策が必要な気がします。
冷房付きで600V・単行となると出物はさほど多くないと思いますが、近年発足した某3セクなどで他車両導入による淘汰なども行われていますので、趣味的には走り続けてほしい車両でもありますが、これらの導入が出来ないものかと考えてしまいます。
理想としては、1両を夏季には予備車として残し、1両の新車導入といった所でしょうか?
あとそちらは熊本へ行かれる際、飛行機で飛ばれたようですね。凄いというか、こちらにはとても真似出来ない芸当です。
投稿: MAKIKYU | 2007.01.11 18:19
遅くなりました。
来ましたねえ青ガエルネタ。私はこの車両の活躍をリアルタイムで知っていますので、感謝感激です(さすがに東横線の急行に使っていた時代は知りませんが…)。
5000系は写真のように、引き込まれ対策としてドアの窓が小さくされ、そのため私が子供のころはこの車両や営団3000系が来ると、外が見れないと言って駄々をこねたそうです。
近いうちに熊本に行き、青ガエルに会ってこようと思います。
投稿: さすらいの8143 | 2007.01.11 23:29
コメントいただきまして、ありがとうございます。
MAKIKYUさん>
今も残っている「青ガエル」ですが、すでに車齢で50年になり冷房装置が無いなど、設備面で劣ってきているのは事実であり、その旨は車内に掲示がありました。なかなか適当な車両が無いのが実情ではないかと思います。
さすらいの8143さん>
私も東急時代の「青ガエル」は見たことがあり、また小学生のときの遠足でこどもの国へ行ったとき、なぜかこどもの国線の折り返しに本来であれば当時大井町線用の5両編成の5000系に乗車した記憶があります。
その後各地の私鉄に譲渡され活躍した5000系も、今となっては熊本電鉄の2両だけになってしまいました。
ぜひ熊本に行きまして、かつての思い出も多い「青ガエル」に会いに行ってみてはいかがかと思います。
投稿: Kaz-T | 2007.01.12 00:49
こんにちは
私も昨年12月に九州を所要で訪ねた際に、この5000系に会いに行きました。
愛くるしい車両と、乗車中の凄い揺れが、どこか懐かしい汽車旅を思い出させてくれました。
私のサイトでは、このときに撮影した動画を紹介しております。
9分37秒もある動画ですが、お時間に余裕があるときにお立ち寄りいただければ幸いです。
投稿: 海外鉄道旅行愛好者 | 2007.01.12 06:17
海外鉄道旅行愛好者さん、コメントとトラックバックをいただきまして、ありがとうございます。ご紹介の動画を拝見いたしました。
自分が乗車したときは、上熊本方が平面の5102Aでしたが、今となっては貴重になった「青ガエル」に乗車した感動がよみがえりました。
もう、車体も疲れを隠せない状況にも見えますし、熊本電鉄自体が経営が厳しい状況ですので、今後はどうなるかはわかりませんが、1日でもながく「青ガエル」が活躍することに、ぜひ期待したいところではないかと思います。
投稿: Kaz-T | 2007.01.13 13:33