続・博覧会に登場したHSST
「愛・地球博」開催・東部丘陵線「Linimo」開業記念 特別連載企画 第3回
画像出典 HSST4号機パンフレット
このシリーズも早3回目になりました。「愛・地球博」開催・東部丘陵線「Linimo」開業記念特別連載企画、今回は1988年になります。
この年は、青函トンネル・瀬戸大橋と開通しまたバブルの時代とあって、全国各地で地方博が華盛りの年でした。青森・函館・岡山・高松など、各所でそれぞれ嗜好をこらした博覧会が開催されたわけですが、その中で今回話題としますのは埼玉県熊谷市で1988年3月19日から5月29日まで開催された「’88さいたま博覧会」です。現在県営スポーツ文化公園として整備された会場で、県や各企業が出展していたのですがこの博覧会の目玉として、今回紹介するHSST4号機が出展されました。
’88さいたま博覧会会場を走ったHSST4号機 1988年3月24日 筆者撮影
このHSST4号機は全長19.4m・幅3.0m・高さ3.6m・重さ20tで会場内330mの軌道を時速40kmで走行しました。科学万博のときのものより大形になったとともに、軌道が今回から高架構造になり将来の実用化に向けた姿になったと言えます。
ここで、今回もさいたま博で出展されたHSSTに関するモノを公開します。
さいたま博HSSTのパンフレット
さいたま博HSSTのきっぷ
上記はいずれも筆者所蔵
さいたま博HSSTは「山崎製パン」がスポンサーについていました。よってパンフレットの写真では側面に「HSST」とロゴが入っていますが、出展時には「Yamazaki」とロゴは入っていたとともに前面にもそのマークが入れられていました。また、この時代にはHSSTの開発は日本航空から分社化された「エイチ・エス・エス・ティ」が行うようになりました。
このHSSTは当時「アメリカのラスベガスで実用化されることになり、そのプロトタイプ車であり博覧会終了後はアメリカに持って行く」という案内を聞いた覚えがあるのですが、その後このHSSTはどうなってしまったのでしょうか?
さて、HSSTが出展された’88さいたま博覧会ですが、この博覧会にはもう一種類のリニアモーターカーが出展されていました。こちらについても触れたいと思います。
もう一種類のリニアモーターカーとは「リムトレイン」と呼ばれるもので、HSSTとの違いは浮上せず、普通のレールの上を鉄車輪で走行するというものですが、軌条間にリニアモーターのリアクションプレートが設置されその推進力で走行するというものです。このような形にすることにより駆動装置部分が不要になり、車輪は車体を支えるのと方向を案内するのみとなり、従来の電車より床面高さを低くすることができ、特に地下鉄で深いところにトンネルを掘る場合でも断面を小さくすることができるとともに、急勾配・急カーブの路線も選択できるようになると言う利点があります。
ここで、リムトレインについて関する画像を公開します。
さいたま博リムトレインのパンフレット
さいたま博リムトレインのきっぷ(この当時の自分の年齢ではこども料金で乗ることができた)
さいたま博会場を走行したリムトレイン 1988年3月24日 筆者撮影
パンフレット・きっぷは筆者所蔵
リムトレインにも乗車したのですが、乗ってみた感想としては普通の電車と同じような感じでしたが、駆動装置のギア音がない分、静かであったと記憶しています。
リムトレインはさいたま博開催の2年後、大阪鶴見緑地で1990年に開催された「花の万博」の際、このアクセス線として開業した大阪市営地下鉄鶴見緑地線(現在の長堀鶴見緑地線)で初めて実用化され、翌1991年には東京で都営地下鉄12号線(現在は都営大江戸線)にもこのシステムが採用されました。その後神戸市営海岸線・福岡市営七隈線でも採用され、現在建設中の大阪市営地下鉄8号線・横浜市営地下鉄4号線でもこのリムトレインが採用されるようです。
以外にも早い実用化で、各地で採用されたシステムのお披露目もあったという点で、この「’88さいたま博覧会」は特筆すべき博覧会であったのではないかと思います。
さて、このさいたま博は友達と2人で行ったのですが、この開催直前にJRはダイヤ改正を行い高崎線が池袋からも発車するようになりました。往復池袋発着の高崎線で行ったのですが、これが現在では横浜方面にも直通運転を行っている「湘南新宿ライン」にまで発展した事始めになります。また、この博覧会を契機に秩父鉄道で熊谷~三峰口間をC58蒸気機関車が牽引する「パレオエクスプレス」の運転を始めました。この列車は今でも春~秋のシーズン中の週末に運行されています。
この博覧会も開催後15年以上が過ぎてしまい、皆様の記憶の中に埋もれてしまっていたのではないかと感じます。この記事で当時を思い出されていただければ幸いかと思います。
参考 HSST4号機及びリムトレインのパンフレット
次回予定 鉄道事業法の適用を初めて受けたリニアモーターカー
関連記事 東部丘陵線Linimoの祖先(2005年2月20日・第1回)
博覧会に登場したHSST(2005年2月23日・第2回)
| 固定リンク
「特別連載企画 リニモ開業」カテゴリの記事
- ついに開業 東部丘陵線「Linimo」(2005.03.06)
- 本格的に実用化される日を夢見て・・・大江から(2005.03.04)
- 鉄道事業法の適用を初めて受けたリニアモーターカー(2005.02.28)
- 続・博覧会に登場したHSST(2005.02.26)
- 博覧会に登場したHSST(2005.02.23)
「思い出話」カテゴリの記事
- 東急目黒線が遠い未来に思えた在りし日(2005.08.06)
- JR九州 豊肥本線の名優 SL「あそBOY」号 終焉へ(2005.06.22)
- JR西日本 京阪神アーバンネットワークの思い出 ~福知山線運転再開に際して~(2005.06.19)
- 鉄道事業法の適用を初めて受けたリニアモーターカー(2005.02.28)
- 続・博覧会に登場したHSST(2005.02.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント